まずは、この読書感想文を見つけてくださってありがとうございます。
私、この一連のテキスト(この記事内ではあえてテキストと呼称しています)を読んだとき結構な衝撃を受けたんですけど!
こちらのテキスト、「穢れた聖地巡礼について」の感想でも少しだけ触れましたが、2023年3月ごろにカクヨムに投稿され、一部をざわつかせたテキストです。
とあるライターが、失踪した知人のライターを探すため、情報提供を募っているということでした。
テキストには個人ブログの記事や、匿名掲示板から抜粋された書き込み、取材テープの文字起こしなど、「知人と共に集めていた(知人の失踪にかかわっているのではないか)」という情報、都市伝説、怪談話、噂話が多種多様な表現で書かれています。
そしてそれらの情報をまとめると、同じ系統のエピソードが近畿地方のある場所に集中しているが、はたして…?
というのがおおまかな概要です。
すべてのテキストにおいて心に迫る書き方をされているんですが、こちらはフェイクドキュメンタリー作品となります。
私が初めてこれを読んだのは2023年の、会社が盆休みに入る前の日。取引先もほとんど休みに入ってしまい、休み前にすべきことも午前中で終わってしまって、定時までの消化試合のような時間でした。つい夢中になって読んでしまったんですよね。そして今でもときどき読み返しています。面白くて。
何に衝撃を受けたかと言うと、前述したようにこの一連の作品には多種多様な表現・フォーマットが使われています(テープの文字起こしをはじめ、雑誌の記事の切り抜き、webコラムや児童書など)。
作中ではライターである作者と失踪した知人があることをきっかけに集めたテキストということなので、フォーマットがばらばらなのが当たり前なのですが、これを1人で書ききるのってすごいことじゃない?と思いました。
ふり幅が大きくて、思わず文章の巧みさを友人に熱弁してしまいました。
ひとつひとつの怪談やオカルト話もゾッとするので、『近畿地方のある場所について』と表題についている話以外は順番通りに読まなくてもいいかもしれません。
書籍版では書下ろしのエピソードもあるよ~。
web上で読める洒落怖とか、怖いコピペとか、都市伝説とか、そういうのを読み漁っている人にとっては「このエピソードってもしかしてあの話がモチーフになってる…?」「あのコピペを手本にしている?」みたいなのもあって楽しいです。
ちなみに、このテキストの中の「インタビューのテープ起こし1」の語り手であるKが、「穢れた聖地巡礼について」の主要人物・ライターの小林として登場します(多分)。あと「テープ起こし2」で言及されていた『お祓いができる人』は恐らく宝条だよな?と読み返してて思いました。こういう繋がりって嬉しい~。
「口に関するアンケート」の感想でも述べたのですが、テキストを読み進めるごとに景色が変わっていくような感覚がして、結局本当のところ何があったのかという不安定さがこの作品に見え隠れする恐怖をよりエッジのきいたものにしている気がします。
とにかく、話が違うじゃん……さっきはこう言ってたじゃん……みたいな。手のひら返しというと少し違いますけれども、『ごまかし』『嘘』みたいなものに多少の悪意が付与されているというか。
最後に取材資料として色々と画像が添付されているんですが(これはカクヨム版でも書籍版でも見られる。ただ書籍版の方がちょっとおまけがある)それが怖いのなんのって。
ホラー作品は積極的に摂取する方ではないんですが、読後感が最悪で最高でした。最大瞬間風速は「口に関するアンケート」の方が強かったけど、「近畿地方のある場所について」は考えれば考えるほどじわじわと怪異に侵食されるような感じがします。
とにもかくにも、ここまで読んでくださってありがとうございます。
映画も公開するようですし、「近畿地方のある場所について」ぜひ一度お読みいただければ幸いです。一緒に怖がりましょう!
〈了〉
以下、1月19日に頂いた拍手コメントへの返信
インターネットの怖い話(?)に慣れている人なら「言うほど怖くないかも」という感じなのですが、洒落怖でいうところの自己責任系の要素もあるので大丈夫ならぜひ読んでみてください……!!(このおススメの仕方でいいのか??)
コメントありがとうございました(*´v`*)