「背筋」さんをご存じですか?
2023年の3月ごろに「近畿地方のある場所について」という一連のテキストを投稿してカクヨムをざわつかせた御仁なんですが、その背筋さんが書籍版「近畿地方のある場所について」に次ぐ新刊を出しました。
それが今回感想を述べる「穢れた聖地巡礼について」です。
この作品に登場する怪異、今まで見てきた様々なホラーに登場する怪異の中でもかなりおぞましい部類に入ると思いました。詳細は伏せますが、ビジュも怖いし(電子で買ったんですがカバー裏の画像が出てきたときに心臓が止まるかと思った)、何より性質がヤバすぎて絶対に遭遇したくないし、この怪異に遭遇した人にも遭遇したくない。
作中にはなんらかの罪を背負った人物がキャラクターとして登場し、文章中にも「罪を贖う」とか「向き合う」とかいう言葉が出てきたりもしますが、これは決して《赦し》の物語ではないです。むしろその逆で、一切の《赦し》を許容しない、死に至らしめる呪いの物語でした。
主要人物はホラー系のチャンネルを運営しているYoutuberの池田と、そのYoutuberのファンブックを企画したライターの小林、小林の知人でお祓いもできる神社の家系に生まれた一人娘で怪談ライターの宝条の3人。
池田と小林がファンブックに載せるためのいわくつきの心霊スポットや怪談を再検証していくなか、奇妙が現象が起こるようになり……?というのがあらすじです。
第二章の天国病院の話、めちゃくちゃ好き。泣けるとかそういうのではないんですが、章の一番はじめに綴られたエッセイと、一番最後に綴られる著者の心境のコントラストに、えもいわれぬ良さがある。
「喧噪のなか、」~「もう、花火は上がらなかった。」の文章好きすぎて線引いてあります。ホラー小説でこんな文章に出会えると思ってなかった。私が思いつきたかった(??)
他は、まとわりつく”幽霊”に全員心当たりがあるはずなのに、全員心当たりが無いふりをするシーンが好きです。
「近畿地方のある場所について」を読んでいると、「え?この人って、あのとき登場した人?」となるので良ければ「近畿地方~」も読んでください。
※「近畿地方~」を読んでなくても「穢れた聖地巡礼~」は楽しめます。逆もしかり。
※「近畿地方~」の読書感想文もそのうち投稿します。
私は本を読むのに時間がかかるので「この本で一か月くらいワクワクドキドキするか^^」と思って読みだしたらたら止まらなくなって3日ほどで読み終えてしまったため、「なんか背筋さんもう一冊本出してたし……買うか!!」と「口に関するアンケート」を買って読みました。
「口に関するアンケート」は30分ほどで読み終えたんですが、巻末にあるアンケートまで目を通し終わって血の気が引いた感じがしました。
いや、ね、もちろん最初から、なんなら小タイトルの文字列からどことなく不穏な気配はあったんですよ。「ん?これはこういうことだよな?だとしたら……妙だな……?」みたいな。
それが「え?え?え?え?」「なに?……ふう、……何だったんだ……?」「いや、……え?まさか。え……?」となって最後のアンケートで「そ、そういうことだったの……!?」と二周目を読み始める。みたいな。そんな感じです。この本、周回した人が多いんじゃないでしょうか。私は二周目を読み終えて呆然としてしまいました。
私は物語を読むときに情景を想像しながら読むタイプなのですが、最後のアンケートで想像していた情景がまるで塗り替えられてしまったのが衝撃でした。すごい体験をした。
上記の2作品は単品で楽しめるので興味がわいたらぜひ、どちらかだけでもお読みいただければと思います。