2023年9月1日に実写映画ホーンテッドマンションが公開されたので鑑賞してきました。
9月1日は「映画ホーンテッドマンション記念日」にしよう。ジャズ調のグリム・グリニング・ゴーストで祝おう。めちゃめちゃよかったです。
字幕も吹替も鑑賞済み。どっちも最高でした。
これ全米で興行収入がめちゃめちゃ低いってマジ!?十分すぎるほど傑作なんだが!?
※アメリカでは10月からハロウィンシーズンなのと、「バービー」「オッペンハイマー」といった競合が公開中だったのもあり、あまり集客ができなかったのも要因の一つとなっていそうです。日本は夏の暑い時期が幽霊シーズンなのでちょうどよい公開時期となりましたが……。
私は「ホーンテッドマンション」というアトラクションが大好きです。
荘厳で、不気味で、だけど愉快で楽しい999人のゴーストたちの住処が大好きなのです。
TDLで一日ホンテ周回できる、ホーンテッドマンションがテーマというだけで5億点つけちゃう人間が書いた文章なので、この記事を読んだあとに観に行って「なんか、あんま良くねぇな……」と思ったらそれはごめんなさい。
それはそれとして私は5億点の映画体験ができました。
2003年のエディ・マーフィ主演版(以下、03年版と称します)も各種配信サイトやBlue-rayを買って何回も観直すくらい好きなので、今回の映画も実写リメイクの話が出た時点ですごく、すごーーーく楽しみでした。
今年の3月に秋公開が決定して「一日千秋ってこういうコト~!?」となりながら公開日をまっていた次第です。制作中に色々ありましたが本当に公開されてよかった。(私はギレルモ・デル・トロ脚本バチクソホラー全振りのホンテ映画もめっちゃ観たいけど、もうそれは叶わないのかな……)
「アトラクションの再現度」「ストーリー」「テーマ」という3つのポイントでお話していきます。最下部にネタバレありますので、未見の方はご注意を。
【アトラクションの再現度】
03年版は本家アトラクションにリスペクトを持ちつつ、「ホーンテッドマンションが実在したらきっとこんな感じだよね」というのを上手に現実のディテールに落とし込んでいるという感じがしました(図書室あたりに大幅アレンジが加えられている)(03年版ホンテの内装もすごく好き)(室内に仕掛けがあるとワクワクしますね!)。
ただ、それを差し引いても今作のアトラクション再現度やばくない!?!?!?上映時間中ずっとアトラクションに乗ってる気分です。監督さんが元ディズニーキャストということもあり、「アトラクションがマジでそのまま映画になってんじゃん!!」と思いました。エンドレス・ホールウェイの再現、えぐ……。確かに実際どこまでも廊下が続いてる恐怖感と絶望感ってとんでもないですよね……。
03年版の「私ならこうやって出るがな」の入れ込み方だったり、墓場のゴーストたちの和気あいあいさだったり、アトラクションの再現に関してそれぞれ良いところがたくさんあるので、たくさん観て違いの良さを噛みしめたいなと思います。絶対に今作の円盤も買います。
これはネタバレになるけど、どうしても言いたいことがあって、03年版は最終決戦の場が大広間だったところを、今作はアトラクションと同じく墓場で最終決戦となります。私はここで天を仰ぎました。
【ストーリー】
今作はゴースト粒子が写るカメラを発明した天才宇宙学者を主軸に、ニューオーリンズのホーンテッドマンションに引っ越してきた親子、親子の依頼で悪魔祓いを担当するどこか胡散臭い神父、大げさな霊能者、心臓病持ちの大学教授のドリームチームがホーンテッドマンションに挑みます。
最初、ポスターで6人が並んでる姿を見て本当はちょっと不安だったんですよね……「なに…?このメンツでどうなるの…?」っていう漠然とした不安がありました。
でもエンディングまで見終わったときにはもう「一生一緒にいてくれや」と泣いてたんですよね。どのキャラクターも本当に愛しいです。
03年版も今作も、館の歴史は本家ホーンテッドマンションのバックグラウンドストーリー(キャストが考えた非公式の設定)が根底にあるのですが、03年版と今作は全く違う味付けで良かったです。
03年版はアナハイム(カリフォルニア州にできた最初)のディズニーランドにあるホーンテッドマンションをベースにした館で物語が展開していくのですが、
今作は!なんと!!世界各国のディズニーパークにあるホンテの要素がぎゅっとつまったファンサ大盛り作品でした!!!TDLにしか行ったことない私もニコッとなりました。
よく考えたら当時のキャストが考えたBGSが何十年経っても色あせずに実写映画ホンテのストーリーの下敷きになるってすごくないですか?設定を考える天才と設定を拾う天才かよ……。
03年版はエディ・マーフィが主演だったおかげか、コメディの要素もかなり強かった印象ですが、今作はがっつりホラー表現もあり、もちろん笑いもあり、涙もありでした。満足です、満腹です。ありがとう、実写ホンテ。
【テーマ的なところでいうと】
03年版は「家族愛」「夫婦愛」「良き父親、良き夫であること」が全体のテーマだと受け取ったのですが、今回はもっと個人(そして故人)に寄り添った作品だと感じました。
「どうしようもない自分でも」「才能に恵まれない自分でも」「他人とのコミュニケーションが苦手でも」、相手を信じて愛することで道が開けることもある。あと、死んだ後も意外と楽しいのかもしれない。
全体的にやかましい映画かもしれませんが、何か大きな悲しみや苦痛を乗り越えようとするときに、そっと力をくれるようなセリフが多かったです。
そして、やっぱりラストを飾る曲は「聖者の行進(When The Saints Go Marching In)」!!
03年版も今作も共通していました。
やっぱり舞台がニューオーリンズなので(アナハイムのディズニーランドのホンテは『ニューオーリンズ・スクエア』にあります)ラストもこれなんですね~。03年版は特に館の場所に言及されてなかった気がするんだけどエディ・マーフィたち一家が黒人なのでやっぱりニューオーリンズなのかな?
音楽でなんらかの映画賞を受賞してほしいくらい、全編音楽が良かったです。
お時間ある方、アトラクションが好きな方は!!ぜひ!!観に行ってください!!今作のホンテはマジですごい!!
※以下、スクロールすると映画のネタバレ感想があります※
【私が勘違いしてたこと ※ネタバレ】
今作のラスボスの「ハットボックス・ゴースト」さん、私はてっきりパリ版ホンテの「ファントム・マナー」に登場するファントムさんかと思っていたんですが、全然そんなことはなく、思いっきりアナハイムのホンテに登場するゴーストでした。すまんかった。
【今作の好きなところ ※ネタバレ】
- ベンの顔が良い
- ケント神父の顔が良い
- 「ヒーローにならないか?」「パス」(前半)と「ヒーローにならないか?」「パス」(後半)の対比
- マダム・レオタ最強霊能者設定大好きなので活かされてて嬉しい
- 「来週心臓の手術をするんだけどぜひ行きたい!」「じゃあ来ちゃだめだ」
- 字幕版ケント神父「1,2の3 アーメン」
- 休憩してたら屋敷に入れなくなったケント神父
- 前半の「戻れ」(ハットボックス・ゴースト)と後半の「戻れ!」(ハリエット)の対比
- マダム・レオタ(CV.小林幸子)の安定感と安心感
【作中に見つけたイースターエッグなどの話】
最初に親子が館に訪れた際の話。トラヴィス少年が自室にしようとした部屋に飾ってあった「花嫁ゴースト」の肖像画は後で天井裏に登場する「花嫁ゴースト」と同じか?バックグラウンドストーリー(以下、BGS)に登場する花嫁ゴーストは夫を5人殺害しており、たしかセリフの中でも肖像画の花嫁ゴーストは夫殺しだと説明されているので同一人物なのかも?ビジュアルがふたつあるってこと?
ビジュアルがふたつといえば、マスター・グレイシーとゴーストホスト。ホーンテッドマンションに入場したとき最初に通されるホワイエでは朽ちていく肖像画(ストーリービヨンドでは枯れゆく紳士と紹介されてましたね!)を見ながらゴーストホストのアナウンスを聞くことになります。次のストレッチングルームで「果たして諸君はこの部屋から出ることができるかな?私ならこうやって出るがな!(雷鳴)」で天井に首を吊った死体が見えます。これがゴーストホストなんですが、03年版とBGSではゴーストホスト=マスター・グレイシーとなっていました。それが今作の映画では別人物として扱われているようです。ただ、調べてみると当初の設定では元々別人物らしく、ゴーストホストは肖像画が別にあるそう。そうだったんだ!?
ついでなのでストレッチングルーム(伸びる部屋)の話もしましょう。ホワイエの次に通される部屋ですが、今作では主人公たちを館から出さないために閉じ込める部屋となっていました。床が突然「流砂」「タル爆弾」「ワニのいる水辺」に変わるのは、飾られた4枚の肖像画の隠れていた部分、肖像画の人物たちの死因となったものです。おばあちゃまは旦那さんのお墓に腰かけているので死因となるものは描かれていません。まあ、おばあちゃまが旦那さんを殺ったんですけど。
ハリエットとブルース教授が椅子に載せられ館の外へ追い出されたのはおそらく、ライドの「ドゥームバギー」を再現したものではないでしょうか。ハリエットが乗っている椅子は特にそれっぽい形をしています。
ドゥームバギーに乗り込んで最初に通るのは絵画の飾られた廊下。真正面上に飾られた、天気の悪い中船に乗り銛を持った男の絵がありますが、これが今作でも活躍する「船長」ではないかと思います。実際ベンは家で危うく銛で殺されかけていますし。
図書館は本当に原作再現。アトラクションそのもの。
そういえばパイプオルガンはあったけど影が弾くピアノは無かったな。
エンドレスホールウェイの傍らにおいてある鎧さんも大活躍。アナハイムでホンテが完成した当初はマジでキャストさんが中に入って動いてゲストを驚かせていたそうなのですが、本当に怖すぎて危険だった(ゲストが反撃しちゃった)ため、オーディオアニマトロニクスにされたそう。
ブルース教授が座っていた椅子に(装飾品にみせかけて)とまっていたカラスは、サンルームで椅子にとまっていたカラスではないでしょうか。墓地にもカラスはいるけど椅子にとまってるならこっちかなって。そういえば今作は中身が出てこようとしている棺もなかったですね。03年版の納骨堂で派手にやったからかしら。
てっぺんが13時になっている時計やガタガタ鳴る扉、霊が溢れてきそうな膨らむ扉は03年版から続投。
マダム・レオタの降霊室は03年版の方がアトラクションの規模に近かった気もしますが、今作ではより重厚な感じでよかったです。間接照明としての火はいいぞ。
ダイニングルームで舞踏会をする一族。そういえば決闘する男二人の肖像ってここに飾ってあるんですが、今作だと絵画の廊下にまとめられてますね。アトラクションの設定上、マダム・レオタが降霊をしてから幽霊たちが姿(霊体)を現すことになっているので変わるべくして変わった感じですね。シャンデリアの上で陽気にしているおっちゃんが、パイプオルガンの隣で「もっと明るい曲にしてくださらない?」と言ってる女性の霊に対し「酒飲めば楽しいぞ!」と言ってるのが良かったです。酒入ると大概のことは楽しくなる。舞踏会に招かれた連中は舞踏会で死ぬまで踊り続ける呪いにかかった人々だというBGSがあるのですが、今作ではハットボックス・ゴーストことクランプを裏切った者たちが招かれ、そして消されたというストーリーでした。
そこを通り抜けると屋根裏部屋にいきます。派手に上下しないので屋根裏っていう印象があまり無いかもですが、心臓がドクドクいってる花嫁がいる箇所が「屋根裏部屋」とされています。今回は夫殺しの花嫁の独壇場でしたが、グレイシーのところにお嫁に来た少女がトランクの中に隠れて窒息死してしまったというエピソードもあります。03年版ではそれを踏襲してか?子供たちがトランクに閉じ込められるシーンがありましたね。03年版と今作で共通しているのは「屋根裏部屋のトランクの中には起死回生のアイテム」があるということ。03年版は花嫁の手紙、今作ではマダム・レオタの水晶と魔術書です。
ちなみにアメリカのホンテでは屋根裏部屋の音楽はワーグナーの「婚礼の合唱」のアレンジとなっております。
屋根裏から降りた屋敷裏は広大な墓地。ここにいるワンちゃんを連れた墓守はアトラクションの中では唯一の生者なのですが、今作だと普通に幽霊になっていて「死んどったんかワレぇ!」と衝撃を受けました。
ヒッチハイクゴーストも03年版から続投。首切り人と首を切られた人や国際色豊かなゴーストたちもてんやわんやで楽しそう。やっぱり墓場のシーンはこうでなくっちゃね。歌う胸像も期待はしていたのですが、今作は雰囲気的にもなかなか組み込めなさそうでしたね。仕方ない。
そしてリトル・レオタが「死亡証明書をもって早く戻っておいでなさい」と言ってゲストを見送るのですが、今作はハットボックス・ゴーストが「早く館に戻ってこい!」と言うのです。で、アトラクションではこのあたりで「ゴーストを一人、あなたの家までお供させよう」とゴーストホストのアナウンスが入るんですが、キャラクターたちが家に帰ってもゴーストがついて来ちゃう!と憤ってたのはこの設定を拾ったものですね。
細かいところはまだまだ探しきれてないと思うのですが、円盤が出たらじっくり検証したいと思います。ホンテ最高~!