兵器擬人化短編漫画 「Re:Bismarck」 を公開いたしました。
元になっているのは8年前の2015年に擬人化王国で発行した同人誌です。
制作期間2023/02/01~2023/02/13 23:59の約2週間。
セリフやストーリーが既に決まっているとはいえ制作中に人間の生活をだいぶ放棄することになったので、もうこんな無理なスケジュールの制作はしません。しませんったらしません。
書き直しじゃなくてWEB再録じゃダメだったの?と思う方もいらっしゃるかと存じます。実を言うと2019年末~2020年始にかけてPCが故障し、復旧できた一部データを除いては、これまで作ったオフ本・WEB漫画のオリジナルデータがほぼすべて消失したためWEB再録ができませんでした。
かねてより書き直したいなと思っていた作品なんですが(制作を開始する5日前くらいにも友人の伊差川くんに「書き直してぇ」と言っていた)、2/14がビスマルクの進水日だということに気付いてしまい「書き直すなら今か……」と腹を決めた次第です。
2015年の冊子をお持ちの方へ。もしご希望ございましたら2023年版を印刷して無料でお渡しいたしますので、各種連絡が取れそうなSNSやCONTACTからお気軽にお申し付けください。
以下、解説とか。
そもそもなんでここでフッドたちがビスマルクとオイゲンを誤認しているのかということなんですが、ドイツ海軍は大型の水上艦艇のシルエットをなるべく似せようとしていたという話があります。ただでさえ、距離が遠くて見間違えやすいところに、さらにシルエットを似せられる+そしてイギリス海軍が「戦艦の方が前を行くだろう」と思い込んでいたために起こった誤認なのでした。
オイゲンが撃った砲弾が決めてになったようにも見えますが、実際オイゲンの放った20センチ砲弾はフッドが搭載していたロケット砲弾などを誘爆させ、火災を起こす被害を出しました。
致命傷となったのはビスマルクの第五斉射で、フッドの中央─装甲が薄いデッキに命中し、10センチ砲の火薬庫を爆発させました。その後、後部主砲の火薬庫が誘爆し、その火柱はメインマストの4倍の高さにも昇ったといいます。
フッドは轟沈。数ある海戦の中でも被弾から沈没が最も速かったケースであり、生存者もわずか3名だったとのこと。
フッド、プリンス・オブ・ウェールズとの交戦で起こった不具合。
この燃料漏れで、ビスマルクは速力が落ちてしまいます。ただ、逃亡中は英国海軍本部が混乱していて追撃部隊にまったく逆の進路を教えたりしていました。燃料漏れの修理ができており、速力が回復できたら、もしかしたらまた違った運命があったのかもしれません。
まぁ、イギリス海軍はここぞというときに奇跡を起こす人々なので、スコールの中から執念でビスマルクを見つけ出します。
そして、ビスマルクはソードフィッシュに足(左舷の舵)を持っていかれました。逃亡劇もいよいよクライマックス。
実はこの通信の紙を受け取るコマが一番最後まで残っていました。
というのも、ブリッジから射撃管制室に電話で呼びかけることができるのは分かるんですが、実際本国と戦艦の通信のやり取りってどんなもんだったの?っていうのが曖昧だったんですよね。旧版の方は唐突に通信内容のコマになっちゃったし。
というわけでギリギリ(13日の22時ごろ)になって映画「ビスマルク号を撃沈せよ」を見直し、伝令が紙を持ってきてくれてそれを読んでるな……と確認する作業などしていました。
↓ちなみにビスマルクの各電文はこんな感じ↓
ビスマルク艦長のリュッチェンスが西部方面司令部に送った電文
「我らは総統閣下への信頼とドイツの勝利への揺るぎない信念をもって、最後まで戦う所存であります。」
シュテンベルクの総統本部からヒトラー「ドイツ国民の名において貴官に謝意を表す。全ドイツが貴官とともにある。なし得る限りのことはなさねばならぬ。貴官の任務の遂行は、生存をかけて闘う我が国民を力づけるであろう。」
ドイツ海軍元帥のレーダー元帥「我らが思いは貴官と貴艦にあり、奮闘の功なることを祈る」
北部方面司令部のカルルス提督「我ら一同信頼と矜持をもって貴官を思う」
西部方面司令部長官にしてリュッチェンスの上官のザールヴェヒター「幸運を祈る。我らが思いは武勲ある同志と共にあり」
ちなみにうちの擬人化の面々は「憑守(つきもり、英:ガーディアン、独:ガイスト)」と呼ばれ、艦に憑いている神様みたいなシステムなんですが、艦と同期して艦の性能を上げることができたりします。
ロドネーや、冒頭のオイゲンの魔法陣は艦本体と憑守が同期して性能が上がっている瞬間です。
ロドネーにとって『勇敢に戦って死ぬ』ドイツ艦というのは、WWI後にスカパ・フローで自沈していったドイツ戦艦のことです。
それこそ、フッドやクィーン・エリザベスあたりによく聞かされていたのでしょう。
「あの方たちは、自分たちの名誉のためなら自分から沈むのも厭わないのよ」って。
ラスト。
ツェルベルス作戦に臨むシャルンホルストと彼女を護衛するFw190。
フィヨルドでランカスターを迎え撃つティルピッツ。
「ヒトラーの戦艦/エドウィン・グレイ(著) 都島惟男(訳)(光人社NF文庫)」より、私の心に残っている一文をご紹介します。
──(前略)当面、<ティルピッツ>はドイツ海軍にとって資産というよりも負債になった。
ビスマルクはドイツ海軍でもっとも望まれた戦艦でしたが、ビスマルクの喪失により、姉妹艦のティルピッツはドイツ海軍でもっとも疎まれる戦艦となってしまいました。
もしも彼女が人の形をとっていたなら、その心情はいかばかりか。
ビスマルクはたった一度の出撃で、多くの艦ないしは人々の運命を狂わせていきました。
ドイツにとっても、イギリスにとっても、このうえなく特別な存在といって差し支えないでしょう。
プリンツ・オイゲン自身もそのうちの一隻で、ビキニ環礁で最期の瞬間を待つ間、不敵な笑みを浮かべるビスマルクを思い出し「あー、やっぱり気にくわなかったな」とこぼすのかもしれないと思いました。
「軍艦同士で撃ち合って、自分一人だけさっさと格好良く沈んでいったのが妬ましい」
ここから「Bismarck」という同人誌についての独り言。
「Bismarck」は2015年に発行した同人誌ですが、幾人かの知り合いの方に手に取ってもらえた以外はまったく捌けなかった同人誌です。自分で制作した作品は形になると嬉しくなって、結構見返すタイプの人間なんですが、あまりにも捌けなさ過ぎて「内容が悪かったんだ……」と1年以上中身を見返すこともしませんでした。(前年に発行していた同人誌がクオリティの割にたくさんの人様の手に渡っていったというギャップもあったのかなと)
どんなきっかけだったかは覚えていませんが、あるときふと「Bismarck」を読み返して、「意外とまとまってるじゃん……」と思い、自分の中で「Bismarck」に抱いていたネガティブなイメージが少し払拭されたのでした。
「Re:Bismarck」では、かつて自分の技術不足で表現できなかった部分を表現しようと時間が許す限り手を加えました。
どうか、8年と14日間かけて制作した「Re:Bismarck」、お楽しみいただけると幸いです。
以下、2月17日に頂いた拍手コメントへの返信
最初に発行した同人誌から8年を経て、コマ割り・セリフ回し等調整した作品ですので、頂戴した感想を読んだとき、とても嬉しくなりました。
授業などでは触れることのない範囲の歴史を描くことが多々ありますが、ふと何かの拍子に目に留まったとき、興味を持つきっかけのひとつになることができればこれ以上光栄なことはありません。
コメントありがとうございました!とても励みになります!
他の箇所にも投稿してありますが基本的に修正⇒画像差し替えされるのは当サイト「- Nacht. -」の作品ページのみです。