Good-bye, Distant Sky



「今日でさよならだ」

2人はただ、星の海の向こうの銀河を見ていた。


クトゥルフ神話TRPG

ロスト救済/SAN回復シナリオ

Good-bye, Distant Sky

KPは必ず最後までシナリオを読んでからセッションを開始してください。

◆update◆

2022/10/25 権利表示を追加、KP向け情報より上に表紙画像を追加


本作は、「 株式会社アークライト  」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.

Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.

PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」


PL人数:1人(固定)

クリア時間目安:ボイセで30分くらい~ロール次第でいくらでも長くできる気がする

◆本シナリオの特徴

  • 本シナリオは神話生物、呪文に関して独自の解釈を含みます。
  • ロスト救済、もしくはSAN回復、またはロスト救済+SAN回復シナリオとしてプレイすることができます。
  • PLの選択によっては、ロスト探索者はロストのままシナリオ終了となります。また、生還したとしても大きくSANが減少する場合があります。
  • PLの選択によっては、継続(生存)探索者がロストしてエンディングを迎える場合があります。

表紙より下からKP向け情報となります。

◆背景と真実

NPCである「御者」はかつてミ=ゴの協力者であった。ミ=ゴに気に入られた彼はミ=ゴの知識・技術の恩恵を受けたうえ、自ら望んで脳の摘出手術を受けて脳缶となり宇宙を漂い続けている。SANは0であり、すでに正気がどうのという問題ではない。

探索者が乗せられている乗り物は霊柩馬車を模して造られた脳缶の装置の一部であり、NPCはその装置のおかげで探索者と言葉による意思疎通ができている。

悠久の時間を1人で彷徨い続けていたが、そのうち連れ合いを欲するようになり、人間を一晩だけ宇宙の散歩に連れ去っている。(※)

※ロスト探索者の場合、NPCはロスト探索者の遺体を回収し、「復活」の呪文で探索者を蘇らせている。その際、「記憶を曇らせる」呪文で死の瞬間の記憶を思い出させないようにしている。

NPCは宇宙の旅の連れ合いを求めているが、生きている人間に無理強いすることは無い。

探索者が連れ合いになることを拒めばすんなりと元居た場所に帰してくれる。(※)

※ロスト探索者の場合、共に宇宙の旅を続けないかと誘うが、探索者が断れば地球上の適当な場所にこっそりと送り届けてくれる。

その際、死の間際の記憶について、探索者が「強く望めば」記憶を曇らせる呪文を解くが、基本的には記憶を曇らせたまま探索者を地球へ帰す。

御者

INT 16
EDU 20
知識 85
精神分析 90

◆シナリオの元ネタ

スマホゲーム:アイドルマスター シンデレラガールズ(デレマス)の楽曲である「さよならアンドロメダ」から着想を得たシナリオですが、同ゲーム及び「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」内で開催された楽曲イベントのストーリーとは一切関係ありません。


【シナリオ本文】


≪導入≫

探索者が眠りから目を覚ますと、視界には満天の星空が広がっていた。

自分は野外で眠っていただろうか?どうも思い当たる節がない。

探索者が手を伸ばすと、腕が伸びきることは無く透明な何かに阻まれた。

どうやら今自分の目に映っている星空はガラスの向こうにあるものだと理解するだろう。

寝返りをうてる程度の高さはあるが、起き上がることはできなさそうだ。

訳も分からず、見知らぬ狭い空間に閉じ込められていることに言い知れぬ不安を覚えた探索者はSANc(0/1)

≪宇宙を旅する御者≫

「おや、目が覚めたのかな」

ふと探索者の頭上の方から声がする。

身をよじって声のする方へ視線を向けても暗がりで何も見えない。

探索者に名前や正体を尋ねられるとNPCは自分の身分を明かすだろう。

「私はこの馬車の御者をやっている者だ」

(名前などを訪ねられたら探索者の国籍に合わせて適当に答えてください。性別もどっちでもいいです)

姿は見えないものの、御者の声はとても心地よくて安心感を覚える。(SAN回復 1d2)

探索者が「ここはどこだ」と尋ねてきたら

→「馬車だよ。あ、馬車でどこを走っているという質問であれば、ここは宇宙だよ」

【アイディア】or【知識】

→成功した場合:御者の出した「馬車」というキーワードと、異様に低い天井から『霊柩馬車』を連想してしまう。不快感を覚えた探索者はSANc(0/1)

→失敗した場合:特に何もなし

探索者が「何故自分がここにいるのか」と尋ねてきたら

→「私が連れてきた。突然驚かせて本当にごめん。ずっと1人だから、たまに話し相手が欲しくって」

探索者が「自分たちはどこへ向かっているのか」と尋ねてきたら

→「おおぐま座の方角へ」

探索者が「帰りたい」と望んだら

→継続探索者の場合「もちろん。朝になる頃には君の行きたいところに送るよ。」

→ロスト探索者の場合「……そうかい?そう。そうだね。帰りたいよね」

探索者は馬車の中で【聞き耳】を振ることができる。

→成功した場合:御者の声と自分の声、自分が立てる音以外には何も聞こえてこないことに気が付く(宇宙空間なので基本的に音は聞こえてきません)

→失敗した場合:特に何もなし

探索者が音のことについて尋ねてきたら

→「まあ宇宙だからね。音は聞こえないだろうね。でも話ができるから問題無いだろう」

「宇宙にいることが信じがたいかもしれないが、でも一晩の夢みたいなものだよ。プラネタリウムだと思ってゆったりくつろいでくれ」

御者と話をしながら、探索者は馬車の中で【目星】を振り、窓の外の星空を見ることができる。

→成功した場合:無数の星が瞬いているのが見える。星のきらめき以外の光は無く、探索者は神秘的な景色に見とれる。(SAN回復 2d2+1)

→失敗した場合:無数の星が瞬いているのが見える。星のきらめき以外の光は無く、探索者は神秘的な景色に見とれる。(SAN回復 1d3)

御者は探索者に星座の話や、星の名前の話などをしてくれる。

どこかで聞いたことのあるような気軽な話から、探索者が知らない話まで、優しく楽しげに語られる言葉は探索者の心に安寧を与えてくれる。(SAN回復 1d2)

≪探索者の思い出≫

しばらく星の話をしていた御者だったが、ふと「君の話も聞かせてくれよ」と問いかけてくる。

「何でもいい。最近あった楽しいこととか、変わったこととか、……どうせ一晩だけだし、誰にも言えない愚痴とか悩み事でもいいよ」

御者は探索者がどのような話をしても真摯に、そして親身になって聞いてくれる。

また、探索者が何も語りたがらない場合でも無理に喋らせようとはしない。

「そうだ。あの星は地球からも見えるんだけど、見たことあるかな?」などと星の話に戻っていくだろう。

※ロスト探索者の場合、思い出そうとしても自分が死んでいることや、直接の死因となった事象は思い出せない。かろうじて「なぜだかよくわからないけど死にそうな目に遭った気がする」程度の記憶しか思い出せない。御者(KP)がシナリオ内で「記憶を曇らせる」呪文を解除しない限りは、生還しても曇らせた記憶を思い出すことはなく、いずれ記憶は失われる。

探索者が自分の身の上や思い出話を聞かせてくれた場合、シナリオクリア報酬の正気度回復+1

NPCは探索者に無理やり喋らせようとはしませんが、PLがPCのこといっぱい語ってくれると嬉しいよね。

≪アンドロメダ銀河≫

探索者と御者が他愛ない会話を続けながらどれほどの時間が経っただろう。「ああ、」と御者が口を閉ざした。

馬車が一瞬だけくるりと角度を変えたような感覚がし、ガラスの天井の外に渦巻銀河が姿を現した。

「写真で見たことあるかもしれないね。これはアンドロメダ銀河。地球から肉眼で観測できる中では、もっとも遠い場所にある天体のひとつだよ」

探索者は銀河のその美しさに気をとられながらも、気が遠くなるほど地球から離れた位置に来てしまったことについて不安感を覚えSANc(0/1)

御者は探索者に「星空は好き?」と尋ねてくる。

その質問に対し、探索者が肯定的であれば「私と一緒に、このまま宇宙を旅しないか?」と尋ねてくる。

「星空は好き?」という質問に対して探索者が肯定的な場合、シナリオクリア報酬の正気度回復+1

*継続(生存)探索者が「御者と一緒に行かない(地球に帰ることを望む)」と返答すれば、御者は少し寂しそうにすることはあれど、探索者を無事に地球の元居た場所(眠っていた場所)まで送り届けてくれる。

→END1.「さよなら、アンドロメダ」へ

*探索者(ロスト探索者含)が「御者と一緒に行きたい(地球へは帰らないことを望む)」と返答すれば、御者は嬉しそうだが少しためらいがちに

「じゃあ、私と同じように、宇宙でも平気でいられるように処置をしないといけないんだが、いいかな」と言う。

御者は探索者に対して、自分が脳だけを摘出した存在だと語る。どのようにしてそうなったのか、今がどれだけ素晴らしいか。

とても正気の沙汰とは思えない、悍ましい事実を突きつけられたショックによりSANc(1/1d6)

(探索者が一時的狂気に陥った場合、御者は「精神分析」を試みる)

END.2「おやすみ、ネビュラ」は継続探索者も強制ロストエンドとなりますので念入りにご確認ください。

探索者が、やはり地球へ帰ることを望む場合

→END1.「さよなら、アンドロメダ」へ

探索者が、それでも御者と一緒に行く、という場合

→END2.「おやすみ、ネビュラ」へ

*ロスト探索者が「御者と一緒に行かない(地球に帰ることを望む)」と返答すれば、御者は意外そうに「本当に?」と聞いてくる。

「宇宙の旅も、悪くないだろう。一緒に行こうよ、その方がいい。それとも君は、地球でやり残したことがあるのかい?」

御者は探索者を一度だけ説得しようとしますが、探索者が帰ることを強く希望している場合は下記のとおり問いかけてきます。

「そう。では、君は、自分のことをすべて知りたいと思う?」

この問いかけは「記憶を曇らせる」呪文を解くか、解かないか、という分岐になります。

ロスト探索者が地球へ帰ることを望む場合

→END3.「おはよう、アトモスフィア」へ

ロスト探索者が、御者と一緒に行くことを望む場合

→END2.「おやすみ、ネビュラ」へ


【エンディング分岐】


END.1「さよなら、アンドロメダ」

エンド分岐条件:継続探索者が地球に帰ることを望む。

御者は探索者を元居た場所に帰すことを約束する。

「とはいえ、地球までは少し時間がかかる。もう少しだけ、星空を楽しんでくれ」

10分か、30分か、1時間も2時間も経ったかもしれない。

しばらく窓の外に変わりゆく景色を眺めていたら、御者が「さて、そろそろさよならの時間だ」と呟いた。

窓の外の景色が真っ白になる。

突然の眩しさに探索者は目が眩んだが、次の瞬間には自室のベッドか、リビングのソファか、はたまた職場のデスクか、自分が眠りに落ちた場所にいるだろう。日が昇るまでには、まだ少し時間がある。

さっきまで目に焼き付けていた景色は夢だったのか、あるいは──

地上は街の灯りで照らされ、空に輝く星の姿は覆い隠されていたが、探索者は空を見上げるたびに奇妙で心地よい星空の旅を思い出すだろう。

よく見慣れた地上からの星空にほんの少しの安堵を覚えながら、探索者は元の日常へと戻っていく。

シナリオクリア報酬

正気度回復 1d6+2

END.2 「おやすみ、ネビュラ」

エンド分岐条件:探索者が御者と共に宇宙を旅することを望む

「本当に、本当にいいのかい?」

御者は探索者に何度も尋ねてきたが、やがてコホンとひとつ咳払いをした。

「そう、そうか。星空のことだったら、私が知りうる限りのことを教えてあげる」

御者は少し嬉しそうに、探索者に語り掛ける。

「行こう、ひとまずはおおぐま座の方へ向かって。長旅になるよ。眠たくなったら、ゆっくりおやすみ」

優しい声色で語られる星物語と目に映る小さな瞬きは、探索者を心地よい眠りへ誘うだろう。

まるで夢のような景色に包まれて、ゆっくりおやすみ。

「次に目覚めるとき、きみは──」

探索者、ロスト

END.3 「おはよう、アトモスフィア」

エンド分岐条件:ロスト探索者が再び地球に帰ることを望む

<記憶を取り戻さず地球に戻る場合>

御者は探索者を地球に帰すことを約束する。

「とはいえ、地球までは少し時間がかかる。もう少しだけ、星空を楽しんでくれ」

10分か、30分か、1時間も2時間も経ったかもしれない。

しばらく窓の外に変わりゆく景色を眺めていたら、御者が「さて、そろそろさよならの時間だ」と呟いた。

窓の外の景色が真っ白になる。

突然の眩しさに探索者は目が眩んだが、次の瞬間には見知らぬ公園のベンチに座っていた。時計の針がさしている時間は4時で、周りの暗さからして、まだ夜明け前だということがわかった。

さっきまで目に焼き付けていた景色は夢だったのか、あるいは──

地上は街の灯りで照らされ、空に輝く星の姿は覆い隠されていたが、探索者は空を見上げるたびに奇妙で心地よい星空の旅を思い出すだろう。

よく見慣れた地上からの星空にほんの少しの安堵を覚えながら、探索者は元の日常へと戻っていこうとベンチから立ち上がったのだった。

シナリオクリア報酬

正気度回復 1d6+2

<記憶を取り戻すことを強く望んで地球に戻る場合>

「ああ、ああ、……そうか。君は全てを思い出すとショックを受けるかもしれない。でも覚えておいて、大切なことだ。すべて元通りとはいかなくても、君であればきっと、」

御者は言葉に詰まる。

窓の外は相変わらず景色がゆるやかに流れている。

やがて、観念したかのように御者が何事かを呟くのが聞こえてきた。

瞬間、探索者の頭に鋭い痛みが走る。

そして探索者は思い出すだろう。自分が「死」を体験したということを。

死ぬ瞬間の痛み、あるいは恐怖、狂気、後悔、言葉に代えがたい膨大な感情や感覚を追体験した探索者はSANc(1/1d6+1)

(探索者が一時的狂気に陥った場合、御者は「精神分析」を試みる)

気が付けば、探索者は見知らぬ公園のベンチに座っていた。時計の針がさしている時間は朝の7時で、道には人々がまばらに行きかっている。

自分の衣服や身体には何の異常もないが、久方ぶりに見た気がする朝日は、とても眩しく感じられた。

シナリオクリア報酬

正気度回復 1d6+2